白内障

多様なニーズに合わせる多焦点レンズ選択

多焦点レンズが選定療養になり、これからも多焦点レンズは使うことになりました。

まず多焦点レンズを使う上でわかってほしいのは、従来の単焦点レンズを遠く100点、中間20点、手元10点のレンズだとすると、多焦点レンズは遠くの100点を中間、手元に分けて使うので、遠く45点、中間30点、手元35点と分散するに過ぎない特性のレンズですよという点です。なので、多焦点レンズをおすすめの方は、とても条件のいい方だけにするべきで、両眼手術して両眼の45点をたして70点を取りに行くだと思ってください。

遠近両用メガネを使えば、遠く100、手元80も見る場所は限られるが可能なのです。なるべく眼鏡を使わずにアクティブに生活したい方が多焦点レンズを選択するべきで、眼鏡をかけてもよい方には単焦点レンズを迷わずお勧めしています。単焦点は質を重視、多焦点は幅を重視するレンズという感じです。

多焦点レンズは大きく現在のところ次の3つに分類されます。

1)EDOF(焦点深度拡張型)レンズ 質と幅のバランスがいいので、これは今使えるレンズで一番使いやすいレンズかもしれません。というのは光学ロスの一番少ないレンズなので、遠方から中間しか見えないが、コントラスト感度低下(滲んでみえる、ぼけてみえる)が少なく、光障害(光がきらきら広がって見える)が少ないレンズです。なので手元が30㎝がたりないのを除けば使いやすいレンズです。このレンズの場合手元は老眼鏡を使う場合があります。患者さんが許してくれるなら片眼は遠方に合わせて、もう片眼は少し近視側にずらして狙いに行きます。

2)3焦点レンズ これはEDOFレンズを4焦点に分散し、内2焦点は遠方に、あとは60㎝、40cmにあわせたレンズです。遠方から手元までスムーズに見えますが、分散した分コントラスト感度低下はおこるレンズです。

3)2焦点レンズ これは遠方と手元30か40cmの2焦点にあわせたレンズです。2焦点レンズが従来は手元30cmで視力を得る設定のため加入度数が強かった(+4)ので、コントラスト感度低下と光障害がもっとも強かったのです。当院では(⁺3)の加入に抑えて副作用を抑えて、両眼を少し近視に設定するか、片眼を少し近視側に設定しています。

メガネを術後なるべく使いたくない方は、多焦点レンズを使いましょう。ただ、コントラスト感度低下(にじんで見える、ぼけて見える)、光障害はどうしてもでます。 無難に行くならEDOFレンズがおすすめです。もう少し手元へ攻めるなら3焦点で、さらに手元30㎝がどうしても御希望なら2焦点レンズを選択します。

患者さんの希望だけを聞いていると現実と合わないこともあるので、ヒアリングの上譲れるところは譲ってもらい、足りない風呂敷をなるべく伸ばして使っていきます。患者さんのなるべく希望に添いたい、喜んでもらいたいと思って努力しているのは理解してくださいね!